高山寺kosan-ji Temple
寺宝・名所
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明恵上人樹上坐禅像
明恵は貞応元年(1222)に栂尾へ還住し、最晩年を過ごす。高山寺の後山、楞伽山には、上人坐禅の遺跡(華宮殿〈けきゅうでん〉、羅婆坊〈らばぼう〉、縄床樹〈じょうしょうじゅ〉など)が今も残る。華宮殿の西に二股に分かれた一株の松があった。縄床樹と名付け、常々そこで坐禅入観したという。図上の賛によれば、この絵は縄床樹に座る明恵を描いたものである。明恵の近侍、恵日坊成忍(じょうにん)の筆といわれ、明恵の人となりをよく伝える。背景には松、岩、藤、小鳥、栗鼠(りす)などが配される。肖像画にしては人物が小さく、人と自然とが拮抗しつつ調和している。画面構成が羅漢図に似通い、宋画の影響が見られるという指摘がある。 国宝 。鎌倉時代 紙本著色 縦145.0cm 横59.0cm
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石水院
桁行正面3間、背面4間、梁間3間、正面1間通り庇。一重入母屋造(いりもやづくり)、妻入、向拝(ごはい)付、葺。五所堂とも呼ばれる。創建当時、現石水院は東経蔵として金堂の東にあった。安貞2年(1228)の洪水で、東経蔵の谷向いにあったもとの石水院は亡ぶ。その後、東経蔵が春日・住吉明神をまつり、石水院の名を継いで、中心的堂宇となる。寛永14年(1637)の古図では、春日・住吉を祀る内陣と五重棚を持つ顕経蔵・密経蔵とで構成される経蔵兼社殿となっている。明治22年(1889)に現在地へ移築され、住宅様式に改変された。名をかえ、役割をかえ、場所をかえて残る、明恵(みょうえ)上人時代の唯一の遺構である。 国宝。 鎌倉時代。
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鳥獣人物戯画
高山寺を代表する宝物である。現状は甲乙丙丁4巻からなる。甲巻は擬人化された動物を描き、乙巻は実在・空想上を合わせた動物図譜となっている。丙巻は前半が人間風俗画、後半が動物戯画、丁巻は勝負事を中心に人物を描く。甲巻が白眉とされ、動物たちの遊戯を躍動感あふれる筆致で描く。甲乙巻が平安時代後期の成立、丙丁巻は鎌倉時代の制作と考えられる。鳥羽僧正覚猷(かくゆう、1053〜1140)の筆と伝えるが、他にも絵仏師定智、義清阿闍梨などの名前が指摘されている。いずれも確証はなく、作者未詳である。天台僧の「をこ絵」(即興的な戯画)の伝統に連なるものであろうと考えられている。国宝 。平安・鎌倉時代 。4巻 紙本墨画。 甲巻:縦30.4cm 全長1148.4cm 乙巻:縦30.6cm 全長1189.0cm 丙巻:縦30.9cm 全長933.3cm 丁巻:縦31.2cm 全長1130.3cm
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日本最古の茶園
高山寺は日本ではじめて茶が作られた場所として知られる。栄西禅師が宋から持ち帰った茶の実を明恵につたえ、山内で植え育てたところ、修行の妨げとなる眠りを覚ます効果があるので衆僧にすすめたという。最古の茶園は清滝川の対岸、深瀬(ふかいぜ)三本木にあった。中世以来、栂尾の茶を本茶、それ以外を非茶と呼ぶ。「日本最古之茶園」碑が立つ現在の茶園は、もと高山寺の中心的僧房十無尽院(じゅうむじんいん)があった場所と考えられている。現在も、5月中旬に茶摘みが行われる。
沿革
大槻 信 (京都大学大学院准教授)先生の寄稿から高山寺の沿革を辿ります。
草創から現在に至るまで、高山寺は明恵(みょうえ)上人の寺である。寺宝の多くが明恵に関わる。以下では、明恵について概観した上で、高山寺の宝物を、明恵に関わるもの、関わらないものに分けて概説し、最後に高山寺の典籍の伝来について述べる。
明恵は承安三年(一一七三)に生まれ、寛喜四年(一二三二)に没した。八歳で父母を失い、高雄山神護寺の文覚について出家する。東大寺で華厳を学び、勧修寺の興然から密教の伝授を受けた。建永元年(一二〇六)後鳥羽院より栂尾の地を賜り、高山寺を開く。
明恵といえば、厳しい修学修行、釈迦への思慕、自然との調和、人間味あふれる逸話、夢幻に彩られた伝説、書き留められた夢などが想起される。若き日には、求道の思いから右耳を切り落とし、釈尊への恋慕から二度にわたってインド行きを企んだ。残された和歌も自在な境地を伝える。
あかあかやあかあかあかやあかあかや あかあかあかやあかあかや月(明恵上人歌集)
没後は、空達房定真(じょうしん)、義林房喜海(きかい)、義淵房霊典、順性房高信ら高弟がその衣鉢を継いだ。伝記に『明恵上人行状』『明恵上人伝記』などがある。
明恵の教学は華厳を基礎とするが、華厳と真言密教を融合した厳密(ごんみつ)と呼ばれる独自の宗教観を打ち立てた。実践的な修行を重んじ、中でも仏光観と光明真言とが重視される。明恵の宗教思想を理解するため、入寂時を見てみよう。場所は禅堂院、その持仏堂には五秘密曼荼羅(ごひみつまんだら)、華厳善財善知識図(けごんぜんざいぜんちしきず)、華厳海会諸聖衆図(けごんかいえしょしょうじゅうず)が飾られていた。臨終のしつらえとして明恵は弥勒菩薩像を置き、五聖(ごしょう)曼荼羅図をかけ、光明真言、文殊五字真言を唱える。華厳善財善知識図、華厳海会諸聖衆図、五聖曼荼羅図は華厳・仏光観に関わり、五秘密曼荼羅、光明真言、五字真言は密教に関わる。臨終の場はまさに厳密を具現化したものであった。明恵はまた、釈迦、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)をはじめ、文殊、弥勒、春日明神などに深い信仰を寄せている。高山寺の宝物が多岐にわたることは、明恵の信仰の多様性に起因するといえよう。
拝観のご案内
現在の情報
- 公開期間
- 無休
- 拝観休止日
- なし
- 拝観時間
- 8:30~17:00
- 拝観料
- 石水院拝観料 800円 ※秋期入山料500円
- ご連絡先
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- 電話番号 / FAX
- TEL 075-861-4204
- URL
- https://kosanji.com/
行事案内
現在の情報
年中行事
1月1日 | 新年法要(修正会) |
1月8日 | 明恵上人生誕会 |
1月19日 | 明恵上人命日忌法要 |
2月15日 | 釈迦涅槃会 |
彼岸中日 | 春季彼岸会 |
4月8日 | 釈迦誕生会(仏生会) |
5月中旬 | 茶摘み |
8月15日 | 盂蘭盆会 |
8月15日 | 施餓鬼会 |
彼岸中日 | 秋季彼岸会 |
11月8日 | 献茶式 |